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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

手前が「プーレ・ブーカニエ」。プーレは鶏、ブーカニエは現代では燻製の意味だが、もともとはカリブの海賊を指していたとの説もある。左奥が「ポム・カネル」。ともに地場の芳醇なラム酒に合う人気のローカルフード。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2017年 11月号
編集タイアップ企画より

フランス共和国
マルティニーク

 カリブ海の中にフランスがある。フランス101県の一つ、海外県マルティニーク。街並みは欧風の建物が連なる、コロニアルで少しアンニュイな雰囲気。食は食で移民の故郷・アフリカやインドの文化と融合した独特のフレンチカリビアンが内外から注目を集める。やっかみ半分、近隣の島々から“パリかぶれ”と揶揄されるほどだ。

 しかし実際そこに住むのは、家族や仲間と寄り添いながら暮らす素朴な人々。食も庶民の日々の食卓に上るのは、肉の煮込みや焼き物など簡素な料理が中心だ。

 その中でみんなの好物が「プーレ・ブーカニエ」。スパイスでマリネした鶏肉をドラム缶で炭火焼きにしたもので、あちこちに屋台も立つ身近なローカルフードだ。そこら辺に自生するバナナやヤシの葉も一緒に突っ込み焚きつけるから、焼き上がりにはさまざまな風味がまとわりついている。土地の香りと滋味。ほかにどんなおいしい料理があろうと、これこそこの島でしか得られないマルティニークの味だろう。

 屋台と言えば、ユニークなパンも売られている。「ポム・カネル」。味も食感もほぼブリオッシュだが、形が特徴的。同名の果実に似せてつくられたという。誕生に物語がありそうなパンではあるが、島の人はまるで興味がなさそうだ。街中ではこのパンを片手に会話を楽しむ人々の姿をよく見かける。時には話が長引き、じゃあ地場のラムでもやろう、ビーチで踊ろう!となる。どんな歴史があろうがなかろうが、彼らの愛する生活に欠かせないパンなのだ。

 さて、朝は日の出とともに起きるのが島時間。早朝、カフェで焼きたてのバゲットやクロワッサンとカフェオレの朝食を楽しむこともある。こう書くとまるで本国流だが、ばったり会った仲間と食後ものんびりお喋りを続けるのが島民らしい。会話の中身は「家族は元気?」など、ごく当たり前のもの。それでもあふれる陽光の中、その光景は天国に近い幸せを感じさせるのだ。