HOME | 世界の朝食 | コラム ヨーロッパ | ジョージア

世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

地方ごとに姿も多彩なジョージア(旧名グルジア)のチーズパン「ハチャプリ」。写真はトルコに接したアジャラ地方のもの。縁からパンをちぎり、チーズと卵、その上でとろけたバターをからめながら食べる。美味。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2018年 5月号
編集タイアップ企画より

ジョージア

世界文化の十字路、
国民食のチーズパン

 “ジョージアのピザ”と呼ばれることもある。ボートのような形。中央のくぼみから、黄色い卵がのぞいている。盛り上がった縁をちぎると、生地の中にもチーズ! 卵をからめて頬張れば、もちもちとしたパンの食感、チーズの旨味、卵の風味が口の中で一体になる。何とも幸福な味わいだ。

 生地にチーズを包んで焼く、ジョージア名物「ハチャプリ」。直訳すればチーズパンの意味だが、ピザ、時にパイとも紹介されるのは、実は地方ごとに姿形、製法もさまざまだから。ボート形は黒海に面したアジャラ地方のもの。ほかにもシンプルな円形あり、サクッとしたリッチな生地あり、生地とチーズを何層も重ねたものもある。まさに千差万別。でも、どれもが地元の誇りであることに変わりはない。

 世界最古のワイン生産国の一つとされ、日当たりのいい斜面には葡萄畑が広がる。北海道よりやや狭い国土の大半が山岳地帯、隠れ里のような村も多い。そんな地勢も味方してか、何度も他民族の支配に遭いながらも独自の文化を維持してきた。古来、シルクロードの中継地、文化の十字路として多様な調理法や食材が行き交い、洗練されてきたジョージア料理は、その多彩さ、おいしさで人々を魅了する。

 それらの料理をずらりと並べ、家族や友人と食卓を囲むスプラと呼ばれる宴会は、ジョージアの伝統的習慣。人々は詩や神話を朗読し、唄い踊り、たらふく食べる。その光景は、代々守り継ぎ、さらに豊かにしてきた宝の素晴らしさを確認し、受け継ごうとする儀式のようにも見えるのだ。

 そんなジョージアの朝と言えば、やはりハチャプリ。街中には専門店もあり、観光客にも人気だ。焼きたては格別。だが、家の食卓にはもっと豊かな美味がある。パンに果物、チーズやヨーグルト……。豊穣な大地の恵みは、たとえ簡素な料理でも一つ一つがとびきり旨いのだ。幸福な朝。それも人々が誇る、この国の宝物に違いない。